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フルートのつもりが、サックスだった。

aimatsuo
5 時間前
読了時間: 3分

中学校に入学して、最初に迷ったのは部活のことでした。

小学生のころから好きだったバレー部に入ろうと思いながら部活見学の時の顧問の先生のお話に惹かれ吹奏楽部に入ろうと決めていました。そして家にフルートがあったので漠然と、「吹奏楽部に入って、フルートを吹いてみたい」と思っていたんです。理由なんて特にない。ただ、フルートってなんとなく、きれいで、繊細で、自分に合いそうだなと。そんな、軽い気持ちでした。

何度かの部活見学後の音楽室をのぞいたとき、金管も木管もいろんな楽器の音が混ざり合って、なんだか楽しそうで。よし、ここにしよう。そう決めて、入部届を出しました。

ところが、入部してすぐに顧問の渡辺秀之先生に呼ばれました。

「君は、サックスをやりなさい。サックス向きの口をしている。」

え、と思いました。フルートじゃないんですか、と口から出かかりましたが、先生の言葉にはなぜか逆らえない雰囲気がありました。当時の先生は全国大会を目指す吹奏楽部を率いていた方で、楽器の向き不向きを見抜く目があったのかもしれません。でも、中学一年生の私にそんなことはわかりません。ただ、ぼんやりと、「そうなのか」と受け入れるしかありませんでした。

すぐに楽器が持てるのかと思ったのですが、新入部員が100名超いたので毎日廊下で腹筋やグランドでマラソンをしていました。しばらくするとマウスピースを与えられ、ピーピー吹く練習。そして、しばらくして、YAMAHA YAS-62というアルトサックスを割り振られてました。初めて手にしたときの、あのずっしりとした金属の感触が今でも残っています。ケースを開けたとき漂う、独特の油のにおい。マウスピースの硬い感じ。3年間続けられるかなぁと不安になったのを覚えています。

そうこうしているうちに最初に指導をしていただいたのがT先輩。そして大阪音大の赤松次郎先生でした。赤松先生とは30年後に共演できるということになるのですがこのお話はまた後で。この後楽器購入を先生に勧められSELMER SUPER Action を両親に買ってもらいました。

「これね、渡辺貞夫さんが使っていたのと同じメーカーの楽器なんだよ」

先生がそう教えてくれたとき、私はぴんとこなかったけれど、家に帰って少し調べてみました。渡辺貞夫さんといえば、日本ジャズ界のスター。世界を舞台に活躍し続けるサックス奏者。そんな人と同じメーカーの楽器を持っているのか、と思ったとき、なんだかとても上手に吹けそうな、少しふしぎな気持ちになりました。

毎日ロングトーンを繰り返す日々の中で、この楽器はだんだんと自分のものになっていきました。うまく音が出た日は嬉しくて、音程が外れた日は悔しくて。感情がまっすぐ音に出る楽器だな、と、中学生なりに感じていました。

フルートを吹くつもりで入った吹奏楽部で、気づけばサックスにどっぷりはまっていた。あの日の渡辺先生の一言がなければ、私の音楽人生はまったく違うものになっていたと思います。

人生って、自分で選んでいるようで、大切な出会いはだいたい偶然と、誰かの一言から始まるものですね。

次回は、血と汗と涙の練習とサックス漬けの日々について書こうと思います。

 
 
 

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